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2018
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『みかんの丘』レビュー

 第二十九回目のレビューは『みかんの丘』(ザザ・ウルシャゼ、2013年、87分)についてです。夏なので戦争映画でも。南コーカサス地方が舞台なのですが、このあたりは旧ソ連・ロシアの影響などもあってか、人種やら民族やら言語やら国家やらが複雑で、映画中「ん?」となるところが多々ありました。とはいえ、大筋はシンプルなのでほとんど問題はありませんでした。国際学類の人とかならより興味深く観ることができるんでしょうかね。

 ストーリーは以下。
 南コーカサスのジョージア[グルジア]から独立を宣言したアブハジア、そしてそれは「アブハジア紛争」に発展する。
 ジョージアのある集落、そこにはみかん農場の農場主マルゴス(エルモ・ニュガネン)とみかん箱を作る職人イヴォ(レムビット・ウルフサク)の二人しかいない。そこはエストニア人が多く住む集落で、紛争が始まるとみなエストニアに逃れてしまったからだ。二人の家族もエストニアに逃れたが、二人はみかん収穫のためになお留まっていた。
 ある日、集落で、アブハジアを支援するチェチェン軍とジョージア軍の兵士たちの間で戦闘が起こり、大半の者が命を落とすが、チェチェン兵のアフメド(ギオルギ・ナカシゼ)とジョージア兵のニカ(ミヘイル・メスヒ)は負傷していたところをイヴォとマルゴスに助けられ、イヴォの自宅で療養することになる。敵と一つ屋根の下で過ごすことに反発し、互いに殺意を抱きあう二人だったが、イヴォとマルゴスの誠実な態度によって、次第に相手を敵ではなく人間とみなしていく。――

 短くて静かで渋い、大変すばらしい映画でした。なんか「ブラック・ジャック」にあってもおかしくないような話だなあと思いました。人間の尊厳を説き、戦争の不条理さを鋭く告発していますが、しかし説教じみておらず、あくまで自然です。アフメドはイスラーム教を信仰しており、ニカはキリスト教(正教?)を信仰しています。民族が違う、宗教が違う、属する軍が違う、しかし同じ人間である、だから理解し合える、とこういうふうになればいいのですが。
 イヴォとマルゴスの二人の老人がとてもよいです。四人で夕飯の席についているとき、例によって兵士たちが喧嘩するのにうんざりしたイヴォは、ウォッカをかかげて「死に乾杯。死はお前たちの母だ、お前たちは死の子どもたちだ」と言うのですが、そのあとマルゴスが、「ぼくは死に乾杯したくない。命に乾杯しよう」と言うのが好きなシーンです。二人とも筋のしっかり通った人間で、映画に厚みを与えています。
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