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『お茶漬の味』レビュー

 そろそろ桜も満開でしょうか。三月ももう終わってしまいます。

 さて第十一回目のレビューは『お茶漬の味』(小津安二郎、1952年、115分)です。黒澤明、溝口健二と並んで世界でも高い評価を受けている映画監督です。ダイナミックな黒澤映画に比べると、静かでミニマムな映画が多いです。しかし、その分演出や演技に細心の注意を払わなければいけないのでしょうね。ちなみに、中央図書館の視聴覚コーナーには小津安二郎のDVDコレクションが置いてあります。貸出はしていないと思いますが、館内で観る分には無料で観放題! 

 ストーリーは以下。
 妙子(木暮実千代)は、夫の茂吉(佐分利信)を小馬鹿にしている節があって、嘘をついて友達と修善寺の温泉に遊びに行くなど、好き勝手している。茂吉は長野の田舎出身の物静かで真面目な男で、そんな妻を特に咎めたりせず、素知らぬ顔をしている。
 ある日、姪の節子(津島恵子)に見合いの話が舞い込み、相手と演劇を観に行く。妙子もそれに付き添うが、節子はそこから逃げ出し、茂吉と彼が後見人として世話を見ている登(鶴田浩二)が出かけているところへやって来る。頑なな節子の態度に諦めた茂吉は彼女の好きにさせる。その夜、節子は茂吉の家に泊まりに来るが、妙子に気づかれ、さらに茂吉が節子の行動を黙認していたこともバレてしまう。見合いするべきという妙子に、茂吉は、無理に見合いしても自分たちのような夫婦がもう一組できてしまうだけだ、と言ってしまい、彼女は静かに怒って口をきかなくなってしまう。
 仲直りできないまま日々が過ぎ、妙子は突然神戸の友達のところへひとりで出かけてしまう。そんな中、茂吉は急に海外出張を命じられる。二人のすれ違いは解消されるのか。――

 1950年代の東京の風俗が数多く盛り込まれています。ラーメンだったり、パチンコだったり、競輪だったり、野球観戦だったり。終戦から十年と経っていないのですが、意外と立ち直りが早いものなのですね。まあ東京だからというのもあるんでしょうが。さて、パチンコを初めてした茂吉の言葉、「しかし、パチンコもちょいと病みつきになるね。(……)つまり、なんだな、大勢の中にいながら、安直に無我の境にはいれる。簡単に自分ひとりっきりになれる。そこにあるものは、自分と玉だけだ。世の中の一切の煩わしさから離れてパチンとやる。玉が自分だ、自分が玉だ。純粋の孤独だよ。そこに魅力があるんだな。幸福な孤独感だ」。こんなふうに、ふとした言葉や会話が結構楽しかったりします。
 妙子はあっけらかんとしているし、茂吉も感情を表に出さないので、深刻さというものは感じられず、気が滅入らずに観ることができます。終盤、二人がお茶漬の準備をするシーンなんか、とっても素敵です。二人の嬉しそうな顔がたまらないんだな、こりゃあ。まあ、つまりはツンデレってやつなんですかね。
 結婚というものも、男女というものも、現代とだいぶかけ離れていますが、しかし一組の男女が夫婦になるというのは変わりませんし、これからも相当なことがないかぎり変わらないでしょう。夫婦や家族を見つめ続けたからこそ、小津の作品というのは世代を超えて、また国を超えて愛されているのでしょうね。

 最後は妙子のセリフを引用します。
「でも男って複雑ね。女なんて家にいる旦那さましか知らないんだもの。家にいる旦那さまなんて、甲羅干してる亀の子みたいなもんよ。あれで外へ出りゃ、結構兎とかけっこしたり、浦島太郎のせたりすんのよ。大概の女は旦那さまの一部しか見てないのよ」
(節子にたいして)「よく考えんのよ、よく考えてお婿さん決めんのよ。あんたの一生の問題。ネクタイの好みがいいとか、洋服の着こなしがどうとか、そんなことどうでもいいの。なんてったらいいのかな……男の人の頼もしさっていうのかしら、それが一番大事なの」
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