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『椿三十郎』レビュー

 第七回目のレビューは黒澤明の傑作時代劇『椿三十郎』(黒澤明、1962年、96分)です。『用心棒』(黒澤明、1961年、110分)の続編ですが、直接のストーリーはつながっていませんので、単独で観ることができます。とはいえ、これを観たら『用心棒』を、そして『荒野の用心棒』(セルジオ・レオーネ、1964年、96分or100分)をも観たくなること間違いなしです。

 ストーリーは以下のよう。
 江戸時代のとある藩。ある夜、次席家老の黒藤(志村喬)と国許用人の竹林(藤原釜足)の汚職に義憤する九人の若侍たちは、森の中の社殿に集まる。そこでリーダー格の井坂伊織(加山雄三)は、伯父である城代家老の睦田に汚職のことを相談するがはねつけられたこと、しかし大目付の菊井は協力してくれることを報告する。すると、偶然そこへ居合わせた椿三十郎(三船敏郎)が、話を聞く限り菊井が黒幕だと指摘し、それを裏付けるように菊井の懐刀である室戸半兵衛(仲代達矢)率いる大勢の侍たちが社殿を取り囲み、若侍たちは窮地に陥る。しかし、三十郎は巧みにそれを対処し、乗りかかった船だとして若侍たちに協力する。一方、菊井は城代の睦田の屋敷に手下を送り、睦田とその奥方と娘を連れ去る。これまた三十郎の機転によって睦田の奥方と娘は奪還することに成功したものの、睦田の行方はわからない。しかも菊井の策によって、藩の大方は静観する構えをとるか菊井の側についてしまう。圧倒的に不利な状況の中、三十郎と若侍たちは睦田を奪還し、菊井らの悪事を暴くことができるのか。――

 まずテンポがとても良いです。策を考え、相手の策を読み、また策を考え、と椿三十郎の知恵が冴えます。もちろん、相手方の菊井や室戸も負けたものではなく、三十郎は幾度も危機に陥りますが、それもはねのけてしまうカッコよさ。また、三十郎ひとりで幾十人もの敵を倒す殺陣シーンや、ラストの三十郎対室戸の対決シーンなど、チャンバラについても大満足間違いありません。
 三船敏郎、仲代達也、加山雄三、田中邦衛、などなど、考えられないくらい豪華なキャスティング。ところで、この男臭い映画の癒しが睦田の奥方と娘の千鳥です。奥方はのんびりとして争いごとを嫌う性質で、その言動で三十郎たちのペースを崩しますが、それがまた微笑ましい。合図が必要になる場面で、椿を流して合図にしようと提案するのはその娘の千鳥。なんとも風流。白黒で白椿と赤椿の美しさが伝わりづらいのがちょっと残念です。前にも書いたように、翌年撮る『天国と地獄』では、白黒の一部を着色する技術を駆使するのですが、ここでは使えなかったのでしょうか。

 最後に、奥方と三十郎のやりとりを。
三十郎 (生け捕りにした菊井の手下の処置を問われて)「面を知られたんだ、叩き斬るほかねぇな」
奥方 「いけませんよ、そんな。あとの見張りの人を斬ったのも、あなたでしょう」
三十郎 「あんた方を助け出すにゃ斬るほかなかったんでね」
奥方 「でも、助けられてこんなことを言うのはなんですけど、すぐ人を斬るのは悪い癖ですよ。……あなたはなんだかギラギラしすぎてますね」
三十郎 「ギラギラ?」
奥方 「そう、抜き身みたいに」
三十郎 「抜き身?」
奥方 「あなたは鞘のない刀みたいな人。よく斬れます。……でも本当に良い刀は鞘に入ってるもんですよ」
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