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『別離』レビュー

 筑波大学の前期入試が終わったようで、そろそろ合格を確信した受験生がサークルを物色している頃ではないかと思います。
ぜひとも映画研究部に入っていただきたいですね。

 さて、第四回目のレビューは『別離』(アスガル・ファルハーディー、2011年、123分)というイランの映画です。本作はアカデミー賞外国語映画賞を受賞し、脚本賞にノミネートされ、またベルリン国際映画祭では最高賞の金熊賞と女優賞・男優賞で二つの銀熊賞を受賞、など世界的にメチャクチャ高い評価を得ているので、イラン映画ははじめてですが観てみました(ファルハーディーは最近、『セールスマン』という作品で再び外国語映画賞を受賞したようです)。


 ストーリーは以下のよう。
 銀行に勤めるナデルは、14年間連れ添う妻シミンと離婚の危機にあります。シミンはナデルと娘テルメーとともにイランを出て行きたいのですが、ナデルはアルツハイマー病を患う実父の介護のためにイランに残ることを主張しているからです。とりあえず二人は別居。そのため、ナデルはラジエーという敬虔な貧しい妊婦の女性を父のヘルパーとして雇います。宗教上の理由から男性の介護をすることへの抵抗感や介護自身の辛さからラジエーは仕事を辞めたいと思いますが、ラジエーの夫ホッジャトは失業していて、生活のために働かざるをえません。ある日、ナデルとテルメーが家に帰ると、父がベッドに手をつながれ、しかもベッドから落ちて、意識不明でいるのを見つけます。ナデルの父はすぐさま意識を取り戻し、命に別状はありませんでしたが、すぐあとに帰って来たラジエーにたいしナデルは激昂。また、戸棚に入れていたお金がなくなっているのもラジエーのせいだと思い、ラジエーを家から追い出そうとします。お金に関しては無実だと言い張り家のドアに取りすがるラジエーを、ナデルはカッとなって強く押し、ラジエーは玄関の前の階段で転んでしまう。その夜、ラジエーはお腹の子を流産。ナデルは殺人容疑で逮捕され告訴されますが、父の介護を途中で放棄したラジエーを逆に告訴。裁判は、二人をめぐる人びとを巻き込んで、泥沼にはまっていく。――


 どの人にも等しく共感できるし、どの人にも等しく共感できないし、……というふうに、倫理的に云々することが難しい映画でした。そういう意味では、とても脚本が練られていて、とてもリアルだったと思います。緊張感があって、画面にくぎ付けになりました。
 興味深いのがやはりイスラーム教にまつわるアレコレ。たとえば、ラジエーは粗相をしてしまった介護人の着替えを手伝うのが、宗教上罪になるかどうか電話で誰か(モスク? イスラム法学者?)にたずねます(ラジエーの敬虔さは映画でも一つのキー要素です)。また、「殉教者に誓って……です」や「その言葉、コーランに手を載せて言ってみろ」、「コーランに誓えるか?」などという文言が頻出します。これはイスラーム教圏の映画ではないと聞けないセリフですね。とはいえ、介護の問題や貧富の差の問題などを絡めた映画の内容そのものは日本に舞台を移してもまったく違和感はありません。そういうところが、世界的に評価された理由の一つでしょうか。

 アメリカやフランス、イギリス、イタリア、ドイツ、こうした映画大国以外の国の映画もいろいろと観ていきたいですね。まあ結局ツタヤにあるかないかが問題なんですが。せめて外国語映画賞受賞作ぐらいは置いてほしいものです。
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