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2018
0822
Wed
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『Shall we ダンス?』レビュー

 第三十二回目のレビューは『Shall we ダンス?』(周防正行、1996年、136分)についてです。「社交ダンス」を題材にした非常に素晴らしい映画となっています。日本ではまあ話に聞かないこのマイナーな題材を扱いながら、ここまで素敵なストーリーに仕上げることができるというのは、驚くべき才能です。
 主演は役所広司。この翌年にずっと前に紹介した『うなぎ』に出演します。この二作で役所広司をすごい好きになりました。

 ストーリーは以下。
 仕事ではボタン会社の経理課課長にまで出世し、家庭では優しくて可愛らしい妻(原日出子)と一人娘(仲村綾乃)に恵まれ、最近念願の庭付き一戸建てをローンで購入した杉山正平(役所広司)は、日々の生活にどこか満ち足りなさを感じていた。彼は会社の帰り、電車から見えるダンス教室の窓を開けて物憂げにたたずんでいる女性=岸川舞(草刈民代)に目を奪われ、帰る度に彼女の姿を探すようになる。とうとうダンス教室の扉を叩き、社交ダンスを習い始める杉山であったが、目当ての舞からではなく、ベテランのたま子先生(草村礼子)から、初心者三人組として指導を受けることになる。当ては外れたものの、同じ初心者仲間や、プライドが高く恰幅のよい高橋豊子(渡辺えり子)、会社の同僚で五年前から社交ダンスを始めた青木富夫(竹中直人)といった個性的な人びとに交じってダンスを続けるうちに、ダンスの楽しさに眼ざめた杉山。しかし、それを知らない妻は、急に生活が変わった夫を心配して、浮気調査の探偵(柄本明)を雇うのだった。――

 観ていて自然と笑みがこぼれるというか、やさしい気持ちになるというか、そんな映画です。社交ダンス仲間や杉山のことばかりにフォーカスするのじゃなく、妻や娘のこともしっかりとストーリーに織り込んでいるのがすごいです。要素はいっぱいですが、あくまでミニマムに、しかししっかりと描写しています。映画を通してみなが少しだけ成長し、男として、女として、人として素敵になっていく、それを見届けた時、静かな感動に満たされます。
 主役は役所広司と草刈民代なのですが、二人が男と女の関係になるわけでなく、あくまでダンスを通じて友情を培っていくのがとてもいいですね。さて、役所広司は控えめな役どころで、草刈民代も出ずっぱりというわけではありません(演技もそんなに上手くないです)。地味な主役二人を支えるのが個性的な脇役たち。竹中直人や渡辺えり子はさすがの演技。ほかにも柄本明だったり、ダンサーたちだったりがよい演技ですが、特に印象深かったのは杉山の妻を演じた原日出子とたま子先生を演じた草村礼子でした。この二人の役は本作における癒し。夫を愛しているからこそ、ダンスを始めたことにどこか嫉妬する妻。ステップだけでなくダンスそのものに大切なことを教えてくれる先生。この二人が出てくるとついほほ笑んでしまいました。二人ともおばさんなんですが、どこか可愛らしい感じです。ダンスホールでたま子先生と踊る役所広司の楽しそうな顔がよかったなあ。「杉山さん、ダンスはステップじゃないわ。音楽を身体で感じて、楽しく踊ればそれでいいの」、「ダンスはまず、お互いの気持ちなんだから」。
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2018
0817
Fri
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『ハクソー・リッジ』レビュー

 第三十一回目のレビューは『ハクソー・リッジ』(メル・ギブソン、2016年、139分)についてです。メル・ギブソンは前に活動で上映した『パッション』の監督でもありますね。10年ぶりの監督作です。
 さて、本作は「良心的兵役拒否者(Conscientious objector)」でありながら、アメリカ軍で最高位の勲章である名誉勲章を授与されたデズモンド・ドスの半生を映画化したものになります。兵役拒否しているのに何で戦争行ってるの? と疑問に思いましたが、信条によって命令を拒否するのも「良心的兵役拒否」になるらしいです。ドスは「銃を持て(そして人を殺せ)」という命令を宗教的理由から拒否しているので、「良心的兵役拒否者」というわけですね。

 ストーリーは以下。
 デズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)はヴァージニアの自然の中で育った素朴な青年。彼は幼い頃、兄との喧嘩の際にふとしたことで大怪我を負わせてしまい、それから「汝、殺すなかれ」の戒律を強く心に刻むようになった。
 ある日、怪我をした少年を救助し搬送した先の病院で看護師のドロシー(テリーサ・パーマー)に一目ぼれをする。以来、二人は交際を愉しんでいた。一方、太平洋戦争は日に日に激化し、兄や周囲の友人たちは次々と志願し、出征していく。デズモンドは、人は殺せないが衛生兵でなら自分でも国の役に立てると考え、入隊を決める。彼はグローヴァ―大尉(サム・ワーシントン)の隊に配属され、上官のハウエル軍曹(ヴィンス・ヴォーン)の下で軍事訓練を受ける。体力的には非常にすぐれていたデズモンドだったが、「汝、殺すなかれ」の戒律や個人的な事情から、銃に触れることを断固拒否すると、周囲に動揺が広がる。除隊をすすめられたが断固はねのけ、上官や同僚からのイジメにも毅然と耐える姿を見た周囲は次第に彼の信条を尊重していくようになる。しかし、デズモンドの初の休暇――ドロシーとの結婚式を挙げる――を前に、軍は彼を軍法会議にかける。窮地に陥りかかる彼だったが、第一次世界大戦に従軍した過去をもつ父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の機転によって、なんとかそれを乗り越え、無事従軍することになる。そして彼は、1945年5月、激戦地沖縄の地を立つのだった。――

 タイトルにある「ハクソーhacksaw」とは「弓のこ」のことで、浦添城址の周辺にある「前田高地」のこと。北側が急な崖になっていることから「ハクソー」と呼ばれたようです。日本軍はここを重要な拠点とみなし死守にこだわったため、3週間のうちに両軍の間で11回の激しい戦闘が行なわれ、ようやく連合国軍が奪取したそうです。デズモンドたちがこの地に来たのはたぶん最後の一週間辺りでしょう。この激戦の中で彼は銃を持たずに73人を救ったというのですから、とんでもないことです。
 なんといっても戦闘シーンの迫力が印象的でした。『プライベート・ライアン』のノルマンディー上陸作戦シーン並みの迫力があります。とんでもない数の人が死にます。銃や手りゅう弾で顔や手足が吹っ飛んだり、火炎放射器で丸焼きにされたり、銃剣で斬られたり刺されたり、というのがひっきりなしです。沖縄戦ではアメリカ軍の「戦闘神経症」患者が他の戦場と比べて多かったのもうなずけるひどさでした。
 ともかく、デズモンドの信条の強さに心打たれます。自らの信条を曲げることは絶対にできない、信条を曲げては生きてゆくことができない。見習いたいものです。
2018
0816
Thu
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『日本のいちばん長い日』レビュー

 第三十回目のレビューは『日本のいちばん長い日』(岡本喜八、1967年、157分)についてです。昨日の8月15日は終戦記念日、それにちなんで観てみました。終戦から73年、映画公開から51年、30年続いた平成も終わります。平和への想いを新たにして、次の時代に臨みたいものです。

 ストーリーは以下。
 1945年7月26日、米・英・中の三ヵ国首脳によって「ポツダム宣言」が発表された。鈴木貫太郎(笠智衆)内閣は当初、宣言を黙殺し、戦争継続する構えであったが、8月6日の広島への原爆投下、9日の長崎への原爆投下とソ連の参戦によって戦争継続は不可能になり、宣言を受諾するか否かで閣議は紛糾する。幾度かの閣議や御前会議を経て、8月14日に再度御前会議が開かれ、正午、昭和天皇(八代目松本幸四郎)は宣言を無留保受諾を決める。そして、「日本のいちばん長い」24時間が幕を開ける。
 決定に最も反発したのは陸軍省であった。決定を不服とした一部の青年将校たちは、終戦へ向けて着々と準備が進められる裏で、各地をとびまわり、東部軍や第一・第二総軍、近衛師団などの要職につく将校を説き伏せ、協力を仰ごうとしていた。陸軍が立ちあがり、皇居を占拠して、天皇にもう一度考え直してもらうためである。
 畑中少佐(黒沢年男)の説得によってクーデタ協力を決心した井田中佐(高橋悦史)は、天皇ならびに皇居を防衛する近衛師団の第一師団長森中将(島田正吾)の説得に向かう。森さえ説得したならば、クーデタに協力する将校は各段に増えると踏んだからだ。一度は説得されかかるも、井田と入れ替わりで森と対面した畑中と航空士官学校の黒田大尉(中谷一郎)の発言によって森は断固拒否の姿勢を固める。クーデタを起せないと焦った二人は、森とその場にいた将校を殺害し、師団長命令を偽造して近衛歩兵連隊を指揮し、皇居を占拠するのだった。――

 ポツダム宣言の無保留受諾を昭和天皇が決めた14日の正午から、玉音放送が流された15日の正午までの24時間、これが『日本のいちばん長い日』というタイトルの由来です。終戦にあたって内閣でいろいろ会議をしたり、昭和天皇が玉音放送を録音したり、陸軍の青年将校たちがクーデタを計画し、それを実施したり(宮城事件)、「国民神風隊」が首相官邸や鈴木邸などを襲撃したり、出来事盛りだくさんの24時間。それをテンポよく描き切っています。日本史に疎いので「宮城事件」のことは初めて知りました。そういう意味で勉強になるのですが、別にこれが日本じゃなくて別の国の話でも見入ってしまうだろうほどには面白いストーリーになっています。イデオロギーが頭にとりつくと、一つのことしか見えなくなってしまうのだなというのが恐かったです。
 それにしても、なんとも豪華すぎるキャストです。監督は岡本喜八、脚本は橋本忍、笠智衆、三船敏郎、志村喬、加藤武、土屋義男、佐藤允、小林桂樹、加山雄三、ナレーターに仲代達也、などなど、本当に枚挙に暇がないほどの人びと。映画の一大プロジェクトですね。女性や子供はほとんどでてきません。男臭く、非常に骨太な映画になっています。一番印象深かったのは、クーデタの首謀者である畑中役の黒沢年男ですかね。懇願するのも、脅すのも、普通の会話も、セリフがほぼ叫ぶようで、終始眼をひんむいたりしていたからでしょうか。
 ともかく、素晴らしい映画でした。
2018
0815
Wed
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BBQやりました🔥🔥🔥

8月10日に大学構内の「野性の森」で毎年恒例のバーベキューを行ないました。
例年、映研のイベントとしては最大規模のはずなのですが、お盆直前という日の悪さからか参加者は少なめでした。
参加したかったのにできなかった人、すみません。

以下、少ないですが写真です。

BBQ1
ホタテと野菜。

BBQ6
なぜ撮ったのかよくわからない写真。野性の森はこんな感じです。

BBQ3
今回の功労者、いろいろとやっていただきました。ありがとうございました!!!

BBQ4
疲れています。

BBQ2.jpg
顔はNGらしい。

BBQ5.jpg
こちらも今回の功労者、ありがとうございました!!!

本当はもう少し人がいましたよ!

ということで、お疲れさまでした。至らないところが多々ありましたが、なんとか無事にバーベキューを行なうことができてよかったです。参加者の方々、ありがとうございました!!!

暑いですが、映画に満ちたよい夏休みをお過ごしください。
2018
0808
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『みかんの丘』レビュー

 第二十九回目のレビューは『みかんの丘』(ザザ・ウルシャゼ、2013年、87分)についてです。夏なので戦争映画でも。南コーカサス地方が舞台なのですが、このあたりは旧ソ連・ロシアの影響などもあってか、人種やら民族やら言語やら国家やらが複雑で、映画中「ん?」となるところが多々ありました。とはいえ、大筋はシンプルなのでほとんど問題はありませんでした。国際学類の人とかならより興味深く観ることができるんでしょうかね。

 ストーリーは以下。
 南コーカサスのジョージア[グルジア]から独立を宣言したアブハジア、そしてそれは「アブハジア紛争」に発展する。
 ジョージアのある集落、そこにはみかん農場の農場主マルゴス(エルモ・ニュガネン)とみかん箱を作る職人イヴォ(レムビット・ウルフサク)の二人しかいない。そこはエストニア人が多く住む集落で、紛争が始まるとみなエストニアに逃れてしまったからだ。二人の家族もエストニアに逃れたが、二人はみかん収穫のためになお留まっていた。
 ある日、集落で、アブハジアを支援するチェチェン軍とジョージア軍の兵士たちの間で戦闘が起こり、大半の者が命を落とすが、チェチェン兵のアフメド(ギオルギ・ナカシゼ)とジョージア兵のニカ(ミヘイル・メスヒ)は負傷していたところをイヴォとマルゴスに助けられ、イヴォの自宅で療養することになる。敵と一つ屋根の下で過ごすことに反発し、互いに殺意を抱きあう二人だったが、イヴォとマルゴスの誠実な態度によって、次第に相手を敵ではなく人間とみなしていく。――

 短くて静かで渋い、大変すばらしい映画でした。なんか「ブラック・ジャック」にあってもおかしくないような話だなあと思いました。人間の尊厳を説き、戦争の不条理さを鋭く告発していますが、しかし説教じみておらず、あくまで自然です。アフメドはイスラーム教を信仰しており、ニカはキリスト教(正教?)を信仰しています。民族が違う、宗教が違う、属する軍が違う、しかし同じ人間である、だから理解し合える、とこういうふうになればいいのですが。
 イヴォとマルゴスの二人の老人がとてもよいです。四人で夕飯の席についているとき、例によって兵士たちが喧嘩するのにうんざりしたイヴォは、ウォッカをかかげて「死に乾杯。死はお前たちの母だ、お前たちは死の子どもたちだ」と言うのですが、そのあとマルゴスが、「ぼくは死に乾杯したくない。命に乾杯しよう」と言うのが好きなシーンです。二人とも筋のしっかり通った人間で、映画に厚みを与えています。